美容室アルティスト白石壮一さん

1975年大分市生まれ。東京山野美容専門学校で美容の基礎を学ぶ。卒業後、「エルコード渋谷西武デパート店」に6年間勤務するかたわら、TBS テレビ系列「ジャスト」変身コーナーのヘアー担当や、スタイリスト協会ヘアショー、渋谷109にてヘアーショーに出演するなど「カリスマ美容師」として、絶大な人気を集めた。2000年には全日本美容技術選手権優勝、SPC JAPAN 2000 全日本理容美容選手権大会パーティーヘアメイクの部でも優勝し、名実ともに若手No.1のヘアスタイリストとなる。大分に戻ってきてからも、大分県美容組合40周年記念ヘアショー、OBSカボスタイムのヘアーパフォーマンスにも出演するなど、多忙を極める毎日である。

大分市中央町は大分駅前という立地条件の良さから人の流れも多く、7つの商店街と大型店5店が軒を並べる商業激戦区として大分市の中核を担ってきた。記念すべき第一回目のゲスト白石壮一さんは、東京と関西で修行した後、激戦区・中央町に店を構えて4年。彼の接客に対するこだわりや、「セットなら負けない」という自信に満ちた表情から、大分に新しい風を吹き込む旗手として、さらなる飛躍を期待できる若手の一人である。

――:最初にこの仕事を選んだ理由を教えてください。
白石:僕の両親は美容室を経営しています。小さい時からその姿に憧れていて、「高校を卒業したら美容系の学校へ絶対に進学しよう」と決めていました。でもどうせ勉強するなら大分ではなく最先端である東京で学ぼうと思い、代々木の美容専門学校を選びました。一年間という短い間でしたが、美容学の基礎というものを教わりました。美容理論という教えの中に、『美容とは人々を美しくし、人々の美しくなりたいという心を満足させること』というものがあるのですが、その言葉は今でも心の中で言い聞かせています。
――:その教訓が今の自分を創りあげられていく。
白石:ええ、それから渋谷の美容室で修行させていただいたわけですが、僕にとっては始めての実践の場所でした。もちろん、最初からカットなんてさせてもらえませんから、掃除や受付、そしてシャンプーなどが毎日の主な仕事。ヘアメイクはというと、早朝か営業が終わってから練習をしていましたので、寝る時間はほとんどなし。美容師というとイメージが優先しますけどカッコイイだけではないですからね(笑)。つらいことは沢山ありましたが・・・、この仕事が好きなのでしょう。自分に合っているというか。やりがいを感じていましたし、若かったので体力だけはありました。苦い経験ばかりでしたが、なんとか頑張ってこられたと思います。
――:修行時代で思い出に残ったことはありますか。
白石:僕は全日本理容美容選手権大会で優勝させていただいたことがあるのですが、表彰式の間に疲れからか倒れてしまって(笑)。
――:倒れた?
白石:そうですよ。優勝が決まったあと、意識がもうろうとして気を失っていました。気がつけば病院のベッドで点滴を打たれていた(笑)。毎日、夜遅くまで練習していましたから緊張が解けたのでしょう。安堵感が広がるとともに意識がなくなっていった覚えがあります(笑)。でもそのぐらいやらないと厳しい世界であることは間違いないんです。
――:しかし、遊び盛りによく我慢されましたよね。
白石:そうですね。でも美容師なんてそんなものだと思いますよ。遊びたい頃に自宅と仕事場の往復ばかりだし、気を抜けばすぐに結果となって返ってきますから明けても暮れても練習、練習の毎日でしたね。
――:なるほど。それは激戦区の厳しさといえるのですか。
白石:もちろん渋谷という場所は関係していると思います。東京は意識レベルが半端じゃないですから絶対に這い上がっていくという思いでいっぱいでしたから。
――:東京という街自体は違和感なく生活できていたのですか。
白石:ええ、東京は僕のフィーリングにピッタリの街で、すんなりと溶け込んでいました。お客様と話をしても東京の人だと思われていましたね。あっ、でも東京といえばジャスト(※TBSテレビ系列)っていうテレビ番組で紹介された時は大変だったことを覚えています。
――:大変?
白石:放送の翌日に予約帳を見ると白石、白石、白石と僕の名前で埋め尽くされている!(笑)。当時、なんとかして雑誌やテレビに出て有名になりたいとの思いが強かったので、どうしたら名前が売れるかということはよく考えていましたね。どう表現すれば良いのかといろいろと悩みましたが、最終的にはお客様に合った髪型を造りあげていくことが重要なんだなと思いましたね。そう思ってからは自然と指名が入るようになりました。
――:でもそんなに売れっ子に?すごいですね。
白石:認めてもらいたいという一心でやってきたから、この達成感は言葉では言い表せない。おかげで年功序列などない実力世界ですから年齢の割に給料も高給でした。もしかすると今の自分よりも(笑)。